「ちひろさん」は安田弘之さんが書かれた漫画で月刊漫画誌「Eleganceイブ」(秋田書店)に、2013年から2018年まで、第一部が連載されました。単行本1巻は2014年に出版されています。
Netflixオリジナル映画として実写化もされて、2023年2月23日から公開されています。
「ちひろさん」は海辺の小さなお弁当屋で働きはじめた元風俗嬢、彼女の元にいろいろな悩みを抱えた客がやってきます。
ぶれない信念を持っているちひろさんと彼女と出会った人たちの恋愛や仕事、家族、そして生き方、を中心に物語は進んでいきます。
人気のある漫画で評価も高いのですが、一方でこの漫画に対して「気持ち悪い」と感じることもあるようです。
この記事では、
- 「ちひろさん」漫画のどこが気持ち悪いのか?
- 「ちひろさん」漫画がなぜ気持ち悪いのか?
についてまとめています。
「ちひろさん」は男性が勝手に抱いている理想の女性像?
ネット上には「元風俗嬢を美化している」という声や、男性が勝手に抱く「女性にこうあって欲しい」の押し付けだという意見がみられました。
Netflixオリジナル映画『#ちひろさん』配信が始まったので、これから観ます。
— . (@chmt0328) February 23, 2023
男性が安心して消費できる、清濁併せ呑んで主体的に喜んで働く“風俗嬢”のイメージや、ペットの生体展示販売と風俗店を重ねて肯定的に描いたり、ミソジニーがキツくて。
原作を読んで映像化を心配していた作品。 https://t.co/KF7xi7c9Ts
ちひろさんはミソジニーなのか?ミソジニーとは?
ミソジニー(misogyny)とは、女性や女性らしさに対する嫌悪や蔑視のことです。 女性に対する嫌悪や蔑視は、男性が女性に対して持つだけではなく、女性が同性に対しても持つことがあると言われています。
「普通」の幸せの外で静かに凛と生きるちひろさん。
ちひろさんを描いた作者はどのような意図でこの作品を描いたのでしょうか?
作者である安田弘之さんのインタビューによると、「女の人は女らしく」「男の人は男らしく」「幸せはかくあるべき」という今まで示されてきた嘘が暴かれる時代にあって、言われた道筋通りに生きてみたけれど幸せになれていない大人たちが、自分が自分として幸せに生きるにはどうしたらいいんだろう?と考えた時、お手本のように生きる大人がいない。とおっしゃっています。
つまり原作者は男らしさや女らしさの枠を超えて、「自分らしく生きる大人」を表現したかったのでは無いでしょうか?
それには「幸せのテンプレート」と言われる恋愛・結婚・仕事・家庭の枠から外れても自由で幸せな主人公が必要だったはずです。
つまりそういった事から生まれたちひろさんの設定にはミソジニーの意図は無かったと私は考えています。
漫画「ちひろさん」を男性上司何人かに勧められて読んだ時に、ちひろさんが会社を辞めるまでは分かったけど、その後がなぜか共感できなくて、その理由がわかりました。ちひろさんって「マニアックピクシードリームガール」だったんですね。。
— 笛美「ぜんぶ運命だったんかい おじさん社会と女子の一生」発売中 (@fuemiad) February 24, 2023
ちひろさんはマニックピクシードリームガールなのか?マニックピクシードリームガールとは?
マニック・ピクシー・ドリーム・ガール (Manic Pixie Dream Girl、略称MPDG)とは映画のストックキャラクターの一種で「悩める男性の前に現れ、そのエキセントリックさで彼を翻弄しながらも、人生を楽しむことを教える“夢の女の子”」と定義されています。
生きづらさを抱える人々に「人と比べず自分らしく生きる」お手本の存在のようなちひろさんがいて物語は進みます。
たしかに主人公が美人で性に対して奔放(元風俗嬢)というところが男性にとっての「夢」を匂わせる感じがしなくも無いなという感じはします。
昨夜は『ちひろさん』を鑑賞。有村架純さんは舞台挨拶で「ここまで、役に近づけない。近づかせてもらえない役は初めて」と語ったそうですが、私も鑑賞しながら作品に対して同じような気持ちになりました。 pic.twitter.com/lPqxwXqGKn
— ノーシン (@nothin0707) February 24, 2023
特に女性の感想として「合わない」という声も割とありました。
原作者も監督も男性なので、少し違和感を感じるというのはあるかもしれません。
映画版で「ちひろさん」を演じた有村架純さんは舞台挨拶でこうコメントを出しています。
「ここまで役に近づかせてもらえない役どころは初めてで、これまでは役に寄っていく、もしくは役を引き付けるようなアプローチの仕方で撮影させていただいたんですけど、自分が近づくとまた離れて、磁石のようにくっつけない感覚が最後まであったので、『ちひろ』と言うより『ちひろさん』っていう感じがしっくりくるような、そういう特別な存在でしたね」
とても丁寧な話し方をされていますが、「ちひろさん」という人物像にあまり共感出来なかったと暗に示しているような気がします。
私個人としては、「恋愛を必要とせず」「自由」を大切にしているちひろさんの凛とした姿に共感する所も多かったのですが、「元風俗嬢」というのを公然と堂々としている姿を、男性が描く女性へのミソジニー、もしくはMPDGだと感じる人もいるのかもしれないな・・・と調べていてそういう視点もあるのだな・・・と感じました。
独特の価値観を持つ「ちひろさん」と意見が違う人は幸せになれない?
自由で常識に縛られず、「ふつう」になれなかった「ちひろさん」の価値観を、この作品を読んでいるだけで押し付けられているように感じるという意見もネット上では見られました。
「あんどーなつ」とか「ちひろさん」は、主人公の女性が聖母並みに神格化されていて、その登場人物の全てが、彼女を認めて尊敬し憧れるも、誰にも不可侵の超気持ち悪い女として描かれている。
— ShiningFingerBowl (@daidanakamura) September 1, 2021
要は気味の悪い妄想に対して、
Anne with an E のアンは、登場人物がほとんど未熟で現実味がある。
中には、ちひろさんを信じている人はいい人として描かれるのに、ちひろさんの価値観と合わない人は醜い悪人として描かれているという意見も・・・
確かに、物語の中には「生きづらさ」を抱えた人達が多く登場しますが、例えば「ちひろさん」の対局の価値観を持つ「幸せな」登場人物が出てきたら、もっとバランスが良かったかも知れないなと思うところもありました。
【まとめ】ちひろさんの漫画を気持ち悪いと感じるのはなぜ?
● 元風俗嬢を美化することによって女性を軽視しているミソジニーだという意見。
● 独特な価値観を持つ「ちひろさん」に全肯定するキャラクターしか出てこない。思想の偏りを感じて気持ち悪いという意見。
実写版にもなった「ちひろさん」ですが、皆さんはどう感じましたか?
確かに「ちひろさん」は人並み外れているので、好みはわかれると思いますが、「普通」に馴染めなかったうちのひとり、わたし個人としては好きな漫画の一つです。
実写版も拝見しましたが有村架純さんがとても爽やかなちひろさんを演じており、漫画とはまた違った雰囲気を楽しめました。
こんな大人がいていい。親だけが世界の大人のすべてじゃない、と、特に若い世代にちひろさんはしっかりとその背中を見せているように感じました。
皆さんはちひろさんを見てどう感じましたか?
映画『#ちひろさん』Netflix独占配信&全国劇場公開🍱
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) February 23, 2023
主演 #有村架純 原作 #安田弘之 監督 #今泉力哉
彼女に会えば、世界が変わるー。
海辺の小さなお弁当屋さんで働く元・風俗嬢のちひろさん。誰もがどこか生きづらさを抱えるこの時代に、心のままに生きることの大切さを彼女がきっと教えてくれる。 pic.twitter.com/uM7jWxX9VB